【我ら音楽マサイ族】
消えそうで揺るがないウィスパー、豊かな倍音。

みなさま、ご機嫌いかがでしょうか。
音楽ライター まさいよしなりです。

「我ら音楽マサイ族」、今回採り上げますのは今月リリースされたこちらの新譜です。

Simple is best/手嶌 葵

両親から受けた影響で、幼い頃から『パリの恋人』『メリー・ポピンズ』など往年のミュージカル映画に親しみ、そしてルイ・アームストロング、ビリー・ホリディ、エラ・フィッツジェラルドといったジャズシンガーが好きだったという手嶌 葵。こうした映画音楽やジャズの体験が、彼女の音楽観のルーツになっているといいます。

2006年公開のジブリ映画『ゲド戦記』のテーマソングに、無名の新人ながら大抜擢(ヒロインのテルー役として声優も務めました)。この「テルーの唄」でメジャーデビューし、オリコン初登場5位を記録するヒットとなりました。

以降、その儚げで透明感のある独特のウィスパーボイスでコンスタントに活躍を続けてきた彼女ですが、今年でデビュー15周年を迎えました。その記念として6月2日にリリースされましたのが、今回ご紹介するオールタイムベストアルバム『Simple is best』です。

最新リマスタリングが施されたこのベスト、発売に当たっては3つのバージョンが用意されています。まずはCD1枚仕様の通常盤(VICL-65505)。上述の「テルーの唄」をはじめ、人気の高い「さよならの夏」「明日への手紙」「瑠璃色の地球」などを網羅した、全15曲。

SHM-CD(高音質仕様)でリリースされたCD2枚組の限定盤(VICL-70246~7)は、通常盤の15曲に加えて、さらにディスク2に15曲を追加収録した、計30曲という大満足のボリューム。

そして3種目は、通常盤+ライブDVDという完全生産限定盤(VIZL-1906)。実はこれまで本格的なライブ映像はソフト化されたことがなく、そういう意味でもファンが待ち望んだセット内容となっています。

手垢にまみれた感のある「癒し」というワードですが、この方の歌声はまさに「癒し」の倍音を湛えています。しかも、決して芯を失わない、しっかりとした歌声。「ちょっと疲れたな」と弱気になったその時、きっとこのベスト盤はそっと優しく、包み込むように、寄り添ってくれることでしょう。

【我ら音楽マサイ族】
当時の空気感を閉じ込めたライブ盤、待望の復刻。

みなさま、ご機嫌いかがでしょうか。
音楽ライター まさいよしなりです。

「我ら音楽マサイ族」、今回採り上げますのは先月リリースされたこちらの復刻CDです。

フラワー・コンサート/アグネス・チャン (BRIDGE-322)

1971年、ジョニ・ミッチェルの名曲『サークル・ゲーム』(この曲はバフィー・セント=メリーのバージョンが映画「いちご白書」で使用され広く認知されました)を、姉の陳依齡(チャン・イーリン[アイリーン・チャン])とともに歌った、陳美齡(チャン・メイリン[アグネス・チャン])。この曲は香港でリリースされたオムニバスLPに収録され、シングルカットもされて好評を博しました。

その翌年、香港のテレビ番組でアグネスと知り合った平尾昌晃によって日本に紹介され、1972年11月25日、『ひなげしの花』で日本デビューを果たしました。以降、翌73年にかけて『妖精の詩』『草原の輝き』『小さな恋の物語』と、たちまちチャート上位の常連となったのでした。

そんな彼女のライブ盤が、このたび最新リマスターを経て待望のCD化。(CDボックスセットとしてのCD化はされていますが、単体でのCD化は今回が初) 今回ご紹介したこちらは、73年9月15日に行われた東京・草月会館での実況録音盤。まだシングル曲も『ひなげしの花』『妖精の詩』『草原の輝き』と少ない中、それらヒット曲ももちろんセットリストに採り上げながらも、洋邦幅広くセレクトされたカバーソングの数々が聴きどころとなっています。

例えば、香港での実質上のデビュー曲『サークル・ゲーム』。来日後にも再レコーディングしているほどの「お気に入り」の一曲で、このライブでも披露。デビュー当時のフォーキーなテイストに満ちた、魅力的な表現です。他にも『幸せの黄色いリボン』(原曲:ドーン)、『悲しき天使』(ソ連歌謡 メリー・ホプキンによってヒット)、『ウィズアウト・ユー』(原曲:バッドフィンガー ニルソンのカバーでヒット)などは出色の出来栄えといえます。

なお、この「フラワー・コンサート」と同時発売で、75年リリース『ファミリー・コンサート』(ムーンライダースがアレンジを担当)、76年リリース『また逢う日まで』(カナダ留学のため活動を休止する直前のライブ)と、合わせて3枚の貴重なライブ盤が、いずれも最新リマスターでラインナップされています。アーティストと観客とが作り出す、当時ならではの雰囲気、空気感に触れられるのはライブ盤ならではのもの。この機会にお手に取ってみてはいかがでしょうか。

【我ら音楽マサイ族】
遠くなりゆく「昭和」の記憶をまとめたコンピ。

みなさま、ご機嫌いかがでしょうか。
音楽ライター まさいよしなりです。

「我ら音楽マサイ族」、今回採り上げますのは本日リリースされたこちらのオムニバス盤です。

 <ベスト・オブ・昭和> 思い出のTV主題歌集 ~俺たちの旅~ (COCP-41456)

タイトルの通り、往年のテレビ番組の主題歌をまとめた編集盤。「ベスト・オブ・昭和」シリーズとして、「思い出のラジオ・テーマ集 〜カム・カム・エヴリバディ〜」とともにリリースされました。

同じように「昭和」をコンパイルしたこれらのCDですが、「ラジオ」のほうはさすがに時代が古く、NHKラジオ『平川先生の英語会話』や同局『鐘の鳴る丘』など戦後まもなくから、ニッポン放送『少年探偵団』やラジオ東京(現・TBS)『赤胴鈴之助』など昭和30年代までの番組テーマが収録されています。

対してこちら「テレビ」のほうは、新しいもので1981年(昭和56年)の番組までが網羅されており、『銭形平次』『若者たち』『おはなはん』といった昭和40年代からのドラマ主題歌がまとめられています。

こういった「テーマ曲集」のようなオムニバス盤はこれまでにもレーベル各社から数多くリリースされており、今回のように新しいアイテムが登場しても、もはや初出の音源はほとんどないのが実情です。それでもこの一枚を採り上げましたのは、収録曲に貴重な一曲『美しい昔』が含まれているためです。

『美しい昔』は、ベトナム人シンガー、カイン・リーが歌った楽曲です。「ベトナムのボブ・ディラン」と呼ばれた作曲家、チン・コン・ソンの作品で、カインが1970年に大阪万博のステージで歌ったことがきっかけで、翌年日本でレコード化されました。(この時の曲名は『雨に消えたあなた』) そののち、『サイゴンから来た妻と娘』の主題歌として79年に再発売されました。(その際に『美しい昔』へ改題) 今回、この曲が収録されたことは私にとって大きな収穫なのです。

【我ら音楽マサイ族】
デビュー50周年を記念したラブソング・ベスト。

みなさま、ご機嫌いかがでしょうか。
音楽ライター まさいよしなりです。

「我ら音楽マサイ族」、今回採り上げますのは本日リリースされたこちらの編集盤です。

あたしだってLove song!/イルカ (CRCP-20574~5)

神部和夫・山田嗣人(パンダ)・嘉屋泰雄の三人によって結成されたフォークグループ、「シュリークス」。1969年にシングル『君よ!人生は』でコロムビアからデビューし、嘉屋の脱退、所太郎の加入を経て、70年に東芝へ移籍しシングル2枚を発表します。そして71年、このトリオに四人目として加入したのが保坂としえ。シングル『君の生まれた朝』をリリース後、山田と所が抜け、シュリークスは神部と保坂の二人組となりました。のちにこの二人は結婚することになります。

さて、この保坂としえこそ、フォークシンガー、イルカです。74年に『あの頃のぼくは』でソロに転じた彼女は、75年『なごり雪』、77年『雨の物語』、産休を経て79年『海岸通』とヒットを重ね、人気を不動のものにしていきました。また熊本市民にとっては、熊本市制100周年を記念して89年に制作された『光るグリーンシティ』のシンガーとしてもお馴染みでしょう。

こうして、シュリークス加入から今年で50年を迎えたイルカ。それを記念して、2枚組のベストアルバムがリリースされました。『あたしだってLove song!』というタイトルの通り、厖大な作品群の中からラブソングのみをセレクトして、35曲が収録されています。うち1曲は今回のために用意された新曲、タイトルチューンの『あたしだってLove song!』で、変わらぬイルカワールドを聴かせてくれます。また、封入されている36ページに及ぶヒストリーブックも読み応え十分で、彼女の「50年の足跡」を追うのに相応しいボリュームとなっています。

【我ら音楽マサイ族】
ゴダイゴの名ギタリストを偲ぶインスト・ベスト。

みなさま、ご機嫌いかがでしょうか。
音楽ライター まさいよしなりです。

「我ら音楽マサイ族」、今回採り上げますのは今月14日にリリースされたこちらの編集盤です。

アコースティック・カヴァーズ・オヴ・ゴダイゴ~ベスト・セレクション/浅野孝已

ゴダイゴのギタリストとして知られる浅野孝已(あさの たかみ)。中学生にしてセミプロ、16歳で高校を辞めプロとなり、複数のバンドを経てミッキー吉野グループ(のちのゴダイゴ)に加入したのが1975年、24歳の時でした。

その卓越した演奏テクニックはもとより、レコーディングの際にギターシンセサイザーを導入したり、メーカーと協力してギターの開発に取り組むなど、常に「新しい音」を追求したギタリストです。近年も再始動したゴダイゴなどで精力的に活動していましたが、2020年5月、68歳の若さで逝去されました。

そんな彼が、ゴダイゴ時代の楽曲をギター中心のサウンドにリアレンジするというコンセプトでリリースしてきたのが、「アコースティック・カヴァーズ・オヴ・ゴダイゴ」シリーズ、全8作。そして、このCDシリーズからアコースティックな演奏17曲を厳選しコンパイルしたのが、ご紹介した『アコースティック・カヴァーズ・オヴ・ゴダイゴ~ベスト・セレクション』。

ゴダイゴファンのみならず、上質なインストゥルメンタル・アルバムとして広くおすすめしたい、ギターの魅力に満ちあふれた追悼盤です。

【我ら音楽マサイ族】
当時のイメージそのままに、41年後の再録音。

みなさま、ご機嫌いかがでしょうか。
音楽ライター まさいよしなりです。

「我ら音楽マサイ族」、今回採り上げますのは今月1月にリリースされたこちらの配信シングルです。

青い珊瑚礁 ~Blue Lagoon~/松田聖子

1980年のデビュー以来、精力的に活動を続けている松田聖子。40周年を迎えた昨年は、彼女の詞に財津和夫が曲を書いた新曲「風に向かう一輪の花」や、それを含むニューアルバム『SEIKO MATSUDA 2020』(オリコンチャート デイリー1位、ウィークリー3位)を発表。このアルバムには他にも「SWEET MEMORIES ~甘い記憶~」や「瑠璃色の地球 2020」のように、自身のヒット曲の再録音が収録されていました。

その流れを受けてか、配信シングルとして今回リリースされたのが「青い珊瑚礁 ~Blue Lagoon~」。これはもう曲名からお分かりのことでしょう。「裸足の季節」に続く、1980年7月発表のセカンドシングル「青い珊瑚礁」の、リ・レコーディング・バージョンです。

音作りについては、オリジナルを手掛けた大村雅朗の編曲を大枠で踏襲している印象です。その上でコーラスワークやシンセサウンドによって、より爽やかに、より透明感のある音像へとブラッシュアップされています。

また特筆すべきは何と言っても、41年という時を経てなおオリジナルのキーで高らかに、パワフルに、のびのびと歌い上げる、松田聖子という稀代のシンガー。瑞々しさに満ちた「永遠のアイドルっぷり」に、聴き手はもう脱帽するよりほかありません。

【我ら音楽マサイ族】
UKフュージョンの代表格、10枚組BOXで登場。

みなさま、ご機嫌いかがでしょうか。
音楽ライター まさいよしなりです。

「我ら音楽マサイ族」、今回採り上げますのは今年2月にリリースされたこちらのボックスセットです。

The Complete Polydor Years 1980-1984/Level 42 (CDSOL-70973)

Level 42はイギリスのジャズ・ファンク、フュージョン・ポップを代表するバンド。1979年に結成され、80年にレコードデビュー。本国における人気はもちろんのこと、アメリカでもチャートインを果たすほどの大ヒットを放っています。

今回、彼らの初期の活躍を網羅したCDボックスが登場。まず2月に海外盤としてリリースされており、追って3月にはSOLIDから国内流通仕様にて世に出ています。

初期のアルバム5タイトルの最新リマスター、シングルA・B面、12インチリミックス、ボーナス音源の数々、これらをギュッとCD10枚にコンパイルしています。

なお国内流通仕様においては、セットのタイトルに「Vol.1」が追加されています。つまり、これ以降の、よりポップに変貌した時代をまとめた続編がリリースされる予定となっており、こちらも期待大です。

【我ら音楽マサイ族】
発売から40年目の『ロンバケ』超豪華ボックス。

みなさま、ご機嫌いかがでしょうか。
音楽ライター まさいよしなりです。

「我ら音楽マサイ族」、今回採り上げますのは今月21日にリリースされたこちらです。

A LONG VACATION VOX/大滝詠一 (SRCL-12000~12008)

1981年3月21日に発売され、オリコン最高2位を記録したミリオンアルバム『A LONG VACATION』。「君は天然色」「恋するカレン」「さらばシベリア鉄道」など、傑作揃いの全10曲で構成されています。

日本語ロック黎明期に活動したフォーク・ロック・グループ「はっぴいえんど」の解散が1972年、のち自身のレーベル「ナイアガラ」を74年に設立。こうしてソロ活動を精力的に行っていましたが、当時はまだまだ大滝の名を誰もが知っているわけではありませんでした。そしてこの『A LONG VACATION』において、彼は一躍時代の寵児に躍り出たのでした。

もとより音質にこだわりのある彼のこと、このアルバムはリリース20周年、30周年と、節目ごとに「記念リマスター盤」が作られるのが通例となっていました。その時点における最高のマスター素材、最高の機材、最高の技術をもって、さらに未発表音源をボーナスに加えてファンの手元に届けられ、そのたび「ナイアガラー」と呼ばれる大滝フリーク達は狂喜乱舞するのでした。

大滝氏は2013年に逝去。それを受けて、今回の「リリース40周年記念リマスター盤」はこれまでにない豪華な仕様で発売されました。それが『A LONG VACATION VOX』。

肝心のオリジナルアルバムは、新たなマスターテープからリマスターされた最新音源。ボーナスCDとして、DJスタイルの「Road to A LONG VACATION」、貴重なレコーディングセッションを収録した「A LONG VACATION SESSIONS」、『ロンバケ』周辺の蔵出し音源をまとめた「A LONG VACATION RARITIES」。以上4枚のCDに加え、5.1chサラウンド音源とハイレゾリマスタリング音源を収蔵したブルーレイ1枚、リマスター音源使用の30cmアナログレコード2枚、同じくカセットテープ1本、60ページにも及ぶブックレット、当時の告知ポスター・販促グッズ・イラストブックなどの復刻版、アルバムジャケットデザインの大型缶バッジ…と、驚嘆すべきボックスセットとなっています。

ここまでおなかいっぱいでなくてもよい…という向きには、オリジナルアルバムと「Road to A LONG VACATION」のCD2枚組『A LONG VACATION 40th Anniversary Edition』(SRCL-12010~12011)も同時リリースされていますので、気になるみなさんは今すぐチェックを。

【我ら音楽マサイ族】
夭逝の伝説的俳優、そして歌手。

みなさま、ご機嫌いかがでしょうか。
音楽ライター まさいよしなりです。

「我ら音楽マサイ族」、今回採り上げますのは今月10日に再発されたこちらのベスト盤です。

Yusaku Matsuda 1978-1987 MEMORIAL EDITION

1989年公開の映画「ブラック・レイン」でハリウッドデビューを果たし、圧倒的な存在感を見せつけた松田優作。世界に向けてますます活躍が期待されていた、まさにその年、彼は40歳という若さで病に倒れ、帰らぬ人となりました。89年11月6日のことでした。

彼は俳優として活動する傍ら、歌手としても数多くの作品を遺してきました。そして、そんな彼の追悼盤として90年2月21日にリリースされたのが、『Yusaku Matsuda 1978-1987』。15曲を収録したベスト盤です。

今回この追悼盤が最新リマスターにて再リリースされました。CD1枚仕様のリマスター盤とともに、『MEMORIAL EDITION』なる特別仕様も同時発売されており、断然後者のほうが魅力的です。

まずメインとなる再発ベスト盤が1枚。そして87年のアルバム『D.F.Nuance Band』からの貴重な未発表テイクを3曲収録したボーナスCD。さらに今回の目玉となるのが、当初のリリース日(90年2月21日)に関係者のみで行われたシークレット追悼ライブの模様を収録したDVDです。

この映像、出演者は新井英一、石橋 凌、竹田和夫、原田喧太、宇崎竜童と錚々たる顔ぶれが登場する中で、原田芳雄、桑名正博、ジョー山中といった故人によるパフォーマンスも収められています。この「別れの宴」の一部始終は実に貴重な記録であり、この度の再発の価値をさらに高めていると言えます。

【我ら音楽マサイ族】
シリーズ全作に楽曲提供、そして完結を飾る佳曲。

みなさま、ご機嫌いかがでしょうか。
音楽ライター まさいよしなりです。

「我ら音楽マサイ族」、今回採り上げますのは本日リリースされたこちらのCDです。

ONE LAST KISS/宇多田ヒカル (ESCL-5488)

表題曲の「ONE LAST KISS」は、3月8日に公開されたアニメーション『シン・エヴァンゲリオン劇場版』の主題歌として制作されました。宇多田ヒカルはこれまでにも『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序』『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』においてもテーマ曲を手掛けていて、今回はそれらに続いての担当となります。今作をもってシリーズ完結となるため、彼女は劇場版全シリーズに楽曲を提供したことになります。

自身が「エヴァンゲリオン」に深い思い入れがあるということもあり、この「ONE LAST KISS」にも並々ならぬ力が注がれていることが分かります。主題歌としての出来栄えもさることながら、映像から切り離して聴いても楽曲としての魅力が際立っています。多くを説明しすぎない歌詞の中で、大切な人との別れを必然とする愛の歌が紡がれます。そして詞の世界に寄り添う美しくも切ないメロディーも琴線に触れます。

なお、このCDはEP盤としての位置付けになっており、「ONE LAST KISS」の他に既発曲のリマスターなど全8トラックが収められています。

【我ら音楽マサイ族】
彼こそは「タンゴの破壊者」にして「タンゴそのもの」。

みなさま、ご機嫌いかがでしょうか。
音楽ライター まさいよしなりです。

「我ら音楽マサイ族」、今回採り上げますのは今日リリースされたこちらのCDです。

リベルタンゴ ~ ピアソラ・フォーエヴァー/オムニバス (UCCS-1293)

アストル・ピアソラは1921年にアルゼンチンで生まれた作曲家にしてバンドネオン奏者。バンドネオンとは蛇腹を持つ鍵盤楽器で、その形状はアコーディオンを連想させますが、アコーディオンが左右非対称であるのに対し、バンドネオンは左右対称です。アコーディオンは左手だけで蛇腹を押し引きしますが、バンドネオンは両手でそれを行うため、より音にメリハリが付けやすいという特徴があります。

コンサーティーナという楽器に改良を加えて、19世紀のドイツで生まれたバンドネオンは、20世紀初頭までにはアルゼンチンへ大量に持ち込まれ、それ以来アルゼンチン・タンゴに欠かせない楽器として定着しました。こうしてタンゴの「伴奏」のために使われるのが通例となっていたバンドネオンを、音楽の「主役」としてフィーチャーすることを思いついたのが、ピアソラです。

タンゴを基盤として、そこにクラシックの構造やジャズの要素を採り入れ、既存のタンゴの概念を覆し続けた彼の評価には、常に賛否両論が入り混じっていました。「タンゴの破壊者」「踊れないタンゴ」「20年早すぎた」と言われ、タンゴの本流とは違う彼の音楽は、それでもアルゼンチンというローカルのしがらみを軽く越えて、世界的な高評価を得るに至っています。

今年はピアソラ生誕100周年ということで、それを記念したCDリリースが実現しました。「リベルタンゴ ~ ピアソラ・フォーエヴァー」もその中の1枚で、ピアソラが作曲した器楽曲・オーケストラ曲を含む代表作が、それぞれ名演によって収められている、珠玉のオムニバス盤です。

同時発売として、彼がフィリップスとポリドールに遺したレア盤7タイトルも、全て高音質CDでリイシューされました。合わせて8枚、この機会にピアソラの世界を覗いてみませんか。

【我ら音楽マサイ族】
「With コロナ」の世界に響き渡る、
華やかなるウィーンの調べ。

みなさま、ご機嫌いかがでしょうか。
音楽ライター まさいよしなりです。

「我ら音楽マサイ族」、今回採り上げますのは先月27日にリリースされたこちらのCDです。

ニューイヤー・コンサート2021/ムーティ指揮、ウィーン・フィル [SICC-2221~2]

毎年恒例となっている世界的な音楽イベント、ウィーン・フィルによるニューイヤー・コンサート。現地時間の1月1日正午から、「黄金のホール」と呼ばれるウィーン楽友協会大ホール(ムジークフェラインザール)にて執り行われています。

世界中に大きな影響を及ぼし、今なお収束を見ない「コロナ禍」。その真っ只中で開催されることになった2021年のコンサートは、異例の対応を余儀なくされました。それは、「無観客」での実施。

今回で6度目の登壇となったリッカルド・ムーティは、この前代未聞の状況下においてもなお、持ち味の華やかさで古参オケの魅力を存分に引き出しました。ヨハン・シュトラウス2世をはじめとするシュトラウス一族によるポピュラーな楽曲群はもちろん、本コンサート初出となるスッペ作曲「ファティニッツァ行進曲」、ツェラー作曲「ワルツ 坑夫ランプ」、コムザーク作曲「ワルツ バーデン娘」など、聴きどころ満載。現在ウィーン・フィルと最も密接であると言えるムーティならではの、息の合った演奏がCD2枚に渡って展開されていきます。

ニューイヤー・コンサートのライブ盤は、「その年の1月中にCD化する」のが慣例のようになっており、今年は1月27日に日本国内盤が発売されました。海外仕様となるEU盤は、それより数日前にリリースされています。国内盤には日本語のライナーノートが封入されていますが、収録内容は海外盤も同一であり、実売価格に1,000円ほど差がありますので(海外盤が安い)、これはお好みに応じてお選び頂けばよいでしょう。

【我ら音楽マサイ族】
往年の石原軍団を偲ぶコレクターズアイテム。

みなさま、ご機嫌いかがでしょうか。
音楽ライター まさいよしなりです。

「我ら音楽マサイ族」、今回採り上げますのは今月リリースされたこちらの企画盤です。

プライベート2/石原裕次郎・渡 哲也 (TECE-3633)

石原裕次郎と渡哲也、この二人がプライベートでカラオケを歌っているという、宝物のような音源。実はこれ、ファンの間ではよく知られていました。

福井県にある芦原(あわら)温泉、そこの老舗旅館「べにや」。国登録有形文化財(建造物)として登録されていた由緒ある宿です。石原裕次郎はここを定宿として度々訪れ、温泉を満喫したあとはバーで仲間とカラオケを楽しんでいました。「べにや」の宿泊客は、この時録音された石原裕次郎と渡哲也の「秘蔵」の歌唱音源と、一緒に撮られたたくさんの写真を自由に聴いたり見たりすることが可能だったのです。

ところが2018年、この「べにや」が火災に遭い、全焼してしまいます。写真はほとんど焼失し、金庫の中だった録音テープと、それをコピーしたCD-Rも、熱のため大きなダメージを受けてしまいました。

何とかこの音源を蘇らせたい…との思いから、様々な手を尽くし、ついに復活に成功したのが、このCDに収録されている楽曲の数々というわけです。

あくまでプライベート録音であり、リリースを目的として収録されたものではありませんから、その点はまず割り切っておかなければなりません。当然ながら拍手、手拍子、歓声、会話なども紛れ込んでいますし、曲によってはフルコーラスを歌い切っていないものもあります。

そういった点を差し引いて考えても…いやむしろ、そういった不完全な部分があるからこそ、スターのリアルなプライベートに接することのできる、価値ある記録であると言えるでしょう。

ちなみに収録曲は、石原裕次郎による『小樽のひとよ』『岸壁の母』『ラブユー東京』『長崎は今日も雨だった』など、また渡哲也による『みちづれ』『おまえに』『座頭市』『赤提灯の女』など、昭和の幅広い歌謡曲をそれぞれ歌っていて、とても貴重です。

本盤を音楽ソフトとして万人にお薦めするのは難しいと思われます。しかしファンにとっては、時間という意味でも火災被害という意味でも失いかけた、かけがえのない録音です。さらには未使用写真を100ページに渡って収めたフォトブックもセットとなっており、これはもう往年の石原軍団の輝きを見事に切り取った、究極のコレクターズアイテムなのです。この音源が正規盤として発表されたことは、まさに奇跡です。

なお「べにや」ですが、今年4月に新築工事が完了し、営業を再開する予定となっています。

【我ら音楽マサイ族】
猫のように寄り添う、心地のよいシューゲイザー。

みなさま、ご機嫌いかがでしょうか。
音楽ライター まさいよしなりです。

「我ら音楽マサイ族」、今回採り上げますのはこちらのアルバムです。

 猫とアレルギー/きのこ帝国 (UPCH-20403)

きのこ帝国は2007年に大学の同級生4人で結成された日本のロックバンド。その翌年から渋谷や下北沢を中心に本格的なライブ活動を開始。2012年以降はミニアルバムやフルアルバムをインディーズから精力的に発表し、注目を集めました。

2015年にメジャーデビューを果たし、シングル1枚、アルバム3枚をリリース。ますます活動の幅を広げつつありましたが、メンバーの一人が実家を継ぐこととなり脱退を決意、バンドは新メンバーを迎える選択をせず、2019年に活動を休止しています。

「シューゲイザー」と呼ばれるスタイルが彼らの音楽です。往年のサイケデリック・ロックの流れを汲むこのジャンルは、エフェクターにより重厚に歪ませたギター、飽和するほどに高めの音圧で録られたドラムスやベースといった「厚みのある、あふれる音」の一方で、あくまでハーモニーを重視し、ポップで叙情的なメロディーラインや張り上げないボーカルなどが特徴となっています。

イギリスのバンド「ムース」のメンバー、ラッセル・イェーツの逸話が残っていて、歌詞を足元に貼り付けて歌っている姿が「まるで靴を見つめて歌っているようだ」ということで、このスタイルを「シューゲイザー」と呼ぶようになりました。実はこの言い方は和製英語でして、本来の英語では「シューゲイジング」「シューゲイズ」と表現されるのですが、内省的・シャイ・ナイーブなイメージであるこのジャンルを的確に言い表していると感じます。

さて、そんなスタイルをひっさげてメジャーシーンに打って出たきのこ帝国が、2015年11月に発表したのが「猫とアレルギー」。メジャーレーベルにおける最初のアルバムです。全ての楽曲を手掛けているのは、ボーカルでギターの佐藤千亜妃。そのソングライティングのセンスが光る全12曲。あたたかくもあり、切なくもある音楽世界。彼らならではの、あたかも猫のように寄り添ってくれるようなサウンドに浸ってみてください。

【我ら音楽マサイ族】
昭和は遠くなりにけり。しかし今なお輝けり。

みなさま、ご機嫌いかがでしょうか。
音楽ライター まさいよしなりです。

「我ら音楽マサイ族」、今回採り上げますのは1月27日に発売されたこちらの企画盤です。

ベスト・オブ・昭和1 ~丘を越えて (COCP-41370)

J-POPと呼ばれる以前の、SP盤時代の流行歌からニューミュージックに至るまでの日本のポップス。そのヒット曲の数々は、2000年前後に盛んに行われた「ミレニアム復刻ブーム」の中で、一気にCD化が進みました。中でも、特にSP時代の楽曲については、当時のより良い状態のレコードを選り抜いた上で盤起こしが行われ、SP音源としてはかなり良質なCD復刻がされるようになりました。

そしてこのたび、そういった「日本の流行歌ひとまとめ振り返り系」のオムニバスシリーズが新たに登場しました。昭和のヒット曲をCD5枚で俯瞰する『ベスト・オブ・昭和』です。

日本コロムビアからのリリースですが、収録曲はレーベルの壁を越えており、例えばシリーズ1枚目ではコロムビア音源のほかに「赤城の子守唄/東海林太郎」(原盤:ポリドール)、「人生の並木路/ディック・ミネ」(原盤:テイチク)なども収められています。惜しむらくは、「東京ラプソディ/藤山一郎」が初出のテイチク音源ではなく、再録音バージョンとなるコロムビア音源が使用されている点です。権利の問題か、はたまた音質上の取捨選択の結果か、これについては定かではありません。

それはさておき、昭和元年~20年「1 ~丘を越えて」、21~30年「2 ~リンゴの唄」、31~40年「3 ~高校三年生」、41~50年「4 ~ブルー・シャトウ」、51~64年「川の流れのように」、以上5枚に、数々のヒット曲をコンパクトにまとめてあります。

それゆえに、あの曲もない、この曲もない…とお思いの方も当然おられるでしょう。もちろんそういった向きには、さらに枚数の多いオムニバスシリーズがすでにリリースされていますので、そちらをご検討ください。「今回くらいのボリューム感が気軽でちょうど良い」というみなさんにこそお薦めしたいシリーズとなっています。言わずもがな、たび重なるCD復刻の恩恵として、昭和初期から64年まで、どの時期の音源もおしなべて旧来より高音質となっています。

【我ら音楽マサイ族】
噺家が歌う「恋するふたり」、稀代の怪作。

みなさま、ご機嫌いかがでしょうか。
音楽ライター まさいよしなりです。

「我ら音楽マサイ族」、今回採り上げますのは本日再発売されたこちらの一枚です。

 リハビリテーション/三遊亭円丈 (CDSOL-1954)

三遊亭円丈は痩せた風貌と眼鏡がトレードマークの人気落語家。師匠である六代目三遊亭圓生が存命の頃は、新作嫌いの師匠の手前、古典落語ばかりを演じていました。しかし円丈の持ち味は、何と言っても新作落語。1979年に師匠が他界したあと、自作による奇想天外な新作を次々に手掛け、好評を博しました。

そんな彼が1981年にトリオレコードからリリースしたアルバムが、この「リハビリテーション」。野球中継という体で繰り広げられる小ネタや、モールス信号を使った小咄など、いかにも落語家という収録内容で、毒の強いブラックユーモア、キワどいネタが満載の一枚です。

その中でひときわ異彩を放つのが、「恋のホワン・ホワン」。これ、実は79年発表のニック・ロウ「Cruel To Be Kind(恋するふたり)」のカバー。ドーナツ盤でもリリースされているこの円丈バージョンは、中古市場において数万円で取引きされていたという逸話があるほどの珍品です。

今回、この驚愕のアルバムが復刻と相成りました。怒涛のごとくパロディが飛び出す、ユーモアに満ちた衝撃作。カテゴライズできない珍盤を、この機会にぜひどうぞ。

【我ら音楽マサイ族】
「ニューウェイブ」の時代に生まれた一枚。

みなさま、ご機嫌いかがでしょうか。
音楽ライター まさいよしなりです。

「我ら音楽マサイ族」、今回採り上げますのは本日リリースされたこちらの復刻盤です。

ランドセル/P-MODEL

P-MODEL(ピー・モデル)は1979年に日本で結成されたテクノ・ポップのバンド。プログレッシヴ・ロックを展開していた前身バンドの解散によって生まれました。デビュー当時は同時期に結成されたプラスチックス(グラフィックデザイナー、イラストレーター、スタイリストらによる素人パーティーバンドから発展してデビュー)、ヒカシュー(演劇人とミュージシャンとの邂逅)とともに「テクノ御三家」などと呼ばれていました。

「テクノポップ」に括られるこの3つのバンドに共通して言えることですが、確かに表現方法としてシンセサイザーやリズムボックス等のテクノロジーを用いてはいましたが、もっと広く、ポスト・パンク、ニューウェイブの流れにいたものとざっくり捉える方がより相応しいと思われます。その意味で、彼らのスタイルはアメリカのバンドDEVO(ディーヴォ)の影響を強く受けているものと言って間違いないでしょう。

さてP-MODELですが、79年、80年、81年に当時のワーナー・パイオニアから初期アルバム3部作をリリースしており、これらの最新リマスタリング、高音質CD化が進められていました。昨年11月に1st「IN A MODEL ROOM」、12月に3rd「ポプリ」が復刻され、そしてこのたび待望の2nd「ランドセル」が登場。初期3枚の復刻盤がこれにて出揃ったことになります。

鬼才・平沢進(Vo,G)を中心に、秋山勝彦(B,Key)、田中靖美(Key)、田井中貞利(Drs)と、デビュー当時の4人による最後のアルバムがこれです(リリース後、秋山が脱退)。本人たちによる「脱テクノ」宣言前夜、さらに何か新しいものを…と模索する若い才能のスナップショットがここに収められています。

【我ら音楽マサイ族】
ひと息つきたい時、心に寄り添う「古楽器」の響き。

みなさま、ご機嫌いかがでしょうか。
音楽ライター まさいよしなりです。

「我ら音楽マサイ族」、今回採り上げますのは今月リリースされたこちらの新譜です。

シューベルト: アルペジョーネ・ソナタ 他/ルーディン、ハッキネン 他

アルペジョーネとは、19世紀前半に考案された楽器。見た目や演奏法はチェロに似ており、椅子に座った演奏者の前に立てて構え、弓を用いて奏でます。6本の弦を持ち、さらに24のフレットがあるため、この点はギターのようです。そのため「ギター・チェロ」とも呼ばれていました。古楽ファンであれば、バロック期の楽器「ヴィオラ・ダ・ガンバ」との類似性にお気付きかも知れません。

アルペジョーネの外観

そしてこの楽器のために書かれた、現在に伝わる唯一の有名曲が、シューベルトによる「アルペジョーネ・ソナタ」です。この楽器が考案されてすぐ、1824年に作曲されました。ところがこの曲が実際に出版されたのは1871年。もうその頃には、アルペジョーネは忘れ去られた楽器となっていたのです。

そこで演奏家たちは、チェロやヴィオラ、あるいはコントラバスなどを代用してこの「アルペジョーネ・ソナタ」を演奏しました。肝心のアルペジョーネが廃れてしまっていた以上、そうするのが当初からの通例だったのです。しかし、音域も違う、仕組みも違う、そんな楽器を代用するのですから、楽譜そのままを再現するのは非常に困難であり、したがって多少の編曲は仕方のないところでした。

ようやく20世紀中頃になって、アルペジョーネを復元し、原曲を忠実に演奏しようという試みが活発になり、今ではそういった「シューベルトが意図した本来のスタイル」による演奏もCD等で聴けるようになってきました。

今回ご紹介するのは、アルペジョーネとフォルテピアノ(モダンピアノの原型となる古楽器)による、「アルペジョーネ・ソナタ」の新しい録音を収めた一枚です(収録は2019年)。アルペジョーネを演奏しているロシアのアレクサンドル・ルーディンは本来チェロ奏者ですが、正統派の古楽演奏を体現するために、ヴィオラ・ダ・ガンバやこのアルペジョーネも積極的に用いるという人物。本作においてもアルペジョーネならではの独特なニュアンスを見事に表現し切っています。

なお本盤にはこの曲のほかに、シューベルトによる晩年の大作、ピアノ三重奏曲第2番も収録されています。こちらにおいてはルーディンはチェロに持ち替え、ヴァイオリンのエーリヒ・ヘーバルトも加わって堂々たる演奏を繰り広げています。